唐蒸鯛の由来は長崎から加賀藩に伝えられた南蛮料理。地元で獲れた大鯛のお腹の部分に「卯の花」を詰めて盛り付けたもの。卯の花は、おからを主食材とし、刻んだレンコン・ニンジン・ゴボウ・ギンナン・キクラゲ・麻の実などと一緒に油でいためてだし汁・酒・砂糖・しょうゆなどで味つけしたもの。これだけでも一品になる贅沢な卯の花を、脂の乗った鯛にたっぷりと詰めて、美しい九谷焼きの大皿に盛り付けて完成。長崎から加賀藩に伝えられた南蛮料理。二匹の鯛を腹合わせに盛り込むことから”にらみ鯛”ともいう。
鯛のお腹に詰められたおからは、人参、ごぼう、れんこん、しいたけ、ぎんなん、きくらげと一緒に炒められます。出汁や醤油、砂糖などで調味され、ほんのりとした甘さがあります。おからを鯛に詰めて蒸す際には、40分から50分程度、大きなダイの場合は1.5時間以上かかることもあります。この蒸しの過程で、おからにも鯛の風味が移り、美味しく味わえます。
「鯛の唐蒸し」とは、尾頭つきのタイを背開きにし、人参やごぼう、きくらげなどを入れて煮た五目おからを詰め、蒸して作る加賀料理の定番です。この料理は、武家文化の影響を色濃く残す郷土料理であり、二匹のタイを腹を合わせて盛り付けるのが主なスタイルです。
特に祝いごとや婚礼の際に食べられることが多く、嫁入り道具として嫁方から持参された大ダイを、婿方が唐蒸しにして披露します。宴席では、「鯛の唐蒸し」が客人に振る舞われ、祝宴の雰囲気を盛り上げます。この料理は上身部分が客人に分け与えられ、骨の下身は労をねぎらうために近隣の人々に分ける慣習があります。
「にらみ鯛」や「鶴亀鯛」と呼ばれるように、タイの二匹を腹を合わせて盛り付けるのが一般的です。背開きにするのは、腹を切ることが切腹を連想させて縁起が悪いとされたためです。このような細部に、武家文化の名残りが見られます。また、タイのお腹におからをたっぷり詰めるのは、子宝に恵まれることを願っています。
一般の家庭でも祝いごとや祭りの際に楽しまれるほか、季節を問わず祝宴に登場します。伝統を大切にする商家などでは、12月の恵比寿講という祭りで商売繁盛を祈願するために、えびす様に供えたタイを使って唐蒸しを作る風習もあります。
この料理は、鯛の中に卯の花(おから)を詰め込んで蒸し揚げにする加賀料理です。卯の花には銀杏や人参、ゴボウ、しいたけなどが混ぜ合わせられることが一般的です。昔は結婚式や祭りなどの特別なイベントで欠かせない一品でしたが、現代ではその機会は減少しています。手間のかかる料理であるため、昔と異なり、一般の家庭で作ることはほとんどありません。
主な伝承地域:金沢市周辺
主な使用食材:タイ、おから、人参、ごぼうなど