特徴
さつまいもには粘質系と糖質系の2つのタイプがあり、五郎島金時は糖質系に属します。この品種は高系14号の選抜された糖質系で、日本で最も糖質が多いさつまいもの一つです。そのため、他のさつまいもに比べてほくほく感が強く、特有の食感が特徴です。
加賀野菜の一つ、さつまいもの栽培品種「高系14号」は、昭和20年に高知県農業試験場で育成された、早い収穫を目指した品種です。この品種は安定した収量と良い外観を持っています。
イモは紡錘形で、皮の色は紅色で、肉の色は黄白で見た目が美しいです。食味も良く、繊維質が少なく、甘みが強い特徴があります。特に焼き芋に向いており、ゆっくりと加熱することで甘さが一層引き立ちます。
金沢市でのさつまいもの栽培地は、日本海に面した砂丘地で、通気性と保水性に富んだ小さな砂粒の土壌が、格別に美味しいさつまいもを育てています。
たくさんの水や肥料を与えれば収量は増えますが、形や味が悪くなる可能性があるため、肥料の量を抑え、デンプン含量の高いものを育てるようにしています。さらに、米ぬかを主成分とする甘藷専用の肥料を使って、質を重視した栽培を行っています。
植えつけは5月初旬から6月初旬に行い、収穫は8月中旬から11月上旬まで行われます。貯蔵方法と出荷時期は、温度管理をしない倉庫貯蔵の場合は年内に出荷されます。一方、定温貯蔵したものは翌年1月から3月に、キュアリング施設で貯蔵したものは4月から6月に出荷されます。
歴史と現状
金沢市のさつまいも栽培の歴史は古く、元禄時代末期(約1700年)に五郎島村の太郎右衛門が薩摩国から種芋を持ち帰り、栽培の始まりとされています。
明治10年には、自らが開墾した砂丘地で約10ヘクタールの作付けが行われ、これが産地化のスタートとなりました。その後、五郎島村全体に広がり、栽培面積も増加していきました。
昭和13年には約112トンの早生さつまいもが京都、彦根、大阪、敦賀、神戸などの県外に共同出荷され、市場から高い評価を受け、栽培への熱意が一段と高まったとされています。
昭和35〜46年にかけては畑地かんがい事業や構造改善事業、港代替農地造成事業などが行われ、畑地が整備されるとともに生産量も倍増しました。昭和52年にはキュアリング貯蔵法の導入により、腐敗の減少と年間を通じた出荷が可能になり、金沢北部砂丘地での主力野菜となりました。
品種については、昔から「金時」(紅赤)が栽培されており、昭和20年代には多収穫品種の「茨城1号」が登場し、その後「農林4号」(昭和24年)が主要品種となりました。
その後、昭和31年に高知県から「高系14号」が導入され、昭和34年には「高系14号」が主流となりました。現在は、その中から鮮紅色が特徴的な「コトブキ」(昭和53年導入)が主体の栽培品種となっています。
さらに、昭和60年からは帯状粗皮症対策として茎頂培養したメリクロン苗が導入され、現在では主要な栽培方法となっています。