加賀野菜の一つである「加賀つるまめ」の「つるまめ」とは、地元の呼び名で、正式には「フジマメ」という種類のことを指します。フジマメには白花と赤花があります。金沢市で栽培されているフジマメは白花です。
この野菜は日本各地で異なる名前で呼ばれ、インゲンマメ(隠元豆)、センゴクマメ(千石豆)、マンゴクマメ(万石豆)、だら(馬鹿)豆など、多くの別名があります。これらの名前は、栽培が比較的簡単で大量に収穫できることに由来しています。
加賀つるまめは栄養価が高く、カリウム、カロテン、タンパク質、鉄分などを含み、食物繊維も豊富です。これらの栄養素は、現代人の健康にとても重要です。加賀つるまめは、ゆでてサラダや煮物にしたり、そうめんと一緒に炊き上げたりして食べることができます。
出荷時期: 7月〜10月
フジマメ
フジマメは、「野菜種類・品種名考」(青葉高著)によれば、広くインド、東南アジア、中国などで栽培されている野菜です。
日本への伝来については、平安時代の漢字辞典「新撰字鏡」(900年頃)や「本草和名」(910年頃)に記載があり、その伝来年代は古いことが分かっています。また、隠元禅師が1650年頃に中国から導入したという説もあり、近畿・関西地方を中心に栽培が広まったようです。
フジマメには地域ごとにさまざまな呼び名があります。江戸時代の「物類称呼」(1775)によると、関西では「インゲンマメ」(隠元豆)、伊勢地方では「センゴクマメ」(千石豆)と呼ばれていました。特に「千石豆」は、豊産を意味する名前で、岐阜・愛知両県では「マンゴクマメ」(万石豆)と呼ばれていました。
また、収量が多いことから石川県では「だら(馬鹿)豆」とも呼ばれていました。一説には、「だら(馬鹿)みたいに多く採れる」という言葉から名付けられたとも言われています。
石川県内でいつからフジマメが栽培されていたかの詳細は分かっていませんが、おおよそ昭和20年代頃から栽培が始まったと考えられています。
フジマメは、白花フジマメや古市白花といった極早生の白花種が存在し、金沢市で栽培されている白花種も同系統の品種とされています。かつて栽培されていた品種として「松本蔓無」というものもありますが、現在は栽培されていません。この品種は金沢市打木町の篤農家、故松本佐一郎氏が在来の矮性品種から系統分離して育成したもので、昭和37年に品種登録されました。
つるまめは耐乾性があり、高温にも強いですが、低温には非常に敏感です。生育に適した気温は13〜28度で、特に23〜28度が適しています。一方で13度以下の低温では育ちが悪くなります。土壌に対する適応性は広いですが、保水力のある土壌や砂壌土を好む傾向があります。また、酸性には弱く、pH6.0〜6.8が適切です。
本葉が約6枚ほど出た段階からつるが伸び始めるため、本葉が4〜5枚の時に定植を行います。つるが伸びるにつれて支柱に誘引し、支柱の上で摘心します。側枝は伸びるに従って、本葉を2枚残して摘心し、多くの花軸を出して開花結実させます。収穫は開花後10〜14日ほどで始めることができます。莢(さや)の中の豆が大きく肥大する前に収穫するのがコツです。
さやの長さは6〜7cmで、青々とした香りが特徴です。特に金沢市で育てられるものは「加賀つるまめ」と呼ばれ、加賀野菜の一種として認められています。
主な産地は小松市(千石豆)と金沢市(加賀つるまめ)で、旬の季節は5〜7月が千石豆、6〜10月が加賀つるまめです。