いしる
石川県の奥能登地域で製造される魚醤です。この他にも「いしり」や「よしる」という別名があります。日本三大魚醤の一つとして、しょっつるやいかなご醤油とともに名高いです。
特徴として、いしるは魚介類に食塩を加えて漬け込み、1年以上かけて発酵と熟成を経て得られる液体です。古語で魚を「いお」「い」と呼び、魚の汁が変化して「いおしる」から「いしる」や「いしり」と呼ばれるようになったと言われています。また、「よしる」や「よしり」という別名は、魚の余った汁を指します。
いしるには、甘味をもたらすアラニンやグリシン、うま味のグルタミン酸、酸味のアスパラギン酸、苦味のバリンなどのアミノ酸が多く含まれています。これらのアミノ酸と塩味を和らげるペプチドの組み合わせによって、高塩分ながら微妙なうま味が生まれています。香りにはアルデヒドやケトン、ピラジンなどの成分が影響を与えています。
原料としては、生産地で多く漁獲される魚介類が使用されます。外浦地区ではイワシやサバ、内浦地区ではイカの内臓が主な原料です。また、スルメイカやマイワシ、ウルメイワシ、ピンサバ、アジなども使用されます。以前は生産が低調だった1980年代には、他の水産加工品の副産物として頭部や内臓のみを使用する例も多かったそうです。